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荒野

今朝、スーパーで赤ん坊を殺してしまった事件の記事を読んでいてふと思い出した。

 僕は小学3年生から高校を卒業するまでの10年間ほど母方の祖母の家で生活した。
 父は僕が小学5年生の夏、長い闘病生活の後結核で亡くなったのだが、生活困窮のために祖母のもとに一家で転がり込んでいたわけである。
 実はそこには母の姉がすでに子連れで転がり込んでおり、さらに僕が中学生になった頃には母の妹までもが3人の子とともに転がり込んできたのであった。
 
 それはともかく、祖母の家の敷地は五百坪以上もあり、一部野菜をつくったり鶏を飼ったりなどしていたがほとんどが草ぼうぼうの荒野であった。
 思い出したのは、その一角にぼくの知らない一家が確かに住んでいたな、という事実である。だがその一家について細かいことはほとんど何も憶えていない。何しろそこへ転校してきてから父の亡くなるまでの約2年の間の僕はといえば、年がら年中泣いてばかりの泣き虫だったのだ。逆に、父が死んでからの40年以上の間僕はほとんど泣いた記憶がないのだが・・・。
 この一家はおそらく乞食の一家だったと思う。
 このことについて誰かから、どうしてそんな人を住まわせるのかという抗議めいた忠告を受けた祖母が、非常に怒っていたという話を後になって母から聞いたことがある。

今思えば、確かにあのころはそこここに「荒野」があった。
心の中はむしろ「荒野」だらけだったのだ。

地球上から「辺境」は無くなってしまったのか?
そんなことは無かろう。
みんな気がつかないだけなのだ。

そこここに「荒野」「辺境」「混沌」「意味不明のもの」「役に立たないもの」をつくりだすのは古本屋の特技かもしれない。
その意味で、コクテイル君はなかなかいい仕事をしているな?
by nhsmt | 2005-02-07 17:49
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