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変身

先日、同業のお通夜で喪服を着たときにフト思いついて変身してみた。
ゼッケンは女房の作品である。

昨日、この上にコートをはおり一人で出かけた。
午後二時過ぎに新宿駅に着き、中央線プラットホームでマスクをつけコートを脱いだ。
駅構内の人の多いところを七八分歩き回ったのち山手線で原宿へ向かう。
原宿には何十年もまえに一度来たきりだったが昨日は土曜日のためかとんでもない人出であった。
街中にクレープやアイスクリームや私の知らないスイーツの甘い匂い、そこにはお祭りの空気が充満していた。
群集の七八割は十代から三十代くらいの善男善女にみえたが意外に年配の人もいるなと思った。
舗道は往く人と還る人とが道中央を境に整然とした流れを形成しゆっくりと流れていた。

私は、流れの中に埋もれてしまっては面白くないのですれ違う人と対面するように道の中央を歩いた。
マスクをつけた人はしばしば見受けられたが×印のマスクは私だけだ。
こいつはアイキャッチャーとしては抜群の威力である。
対面して流れてくるほとんどの人が「えっ!」という顔をし次の瞬間視線を少し落としてサッとゼッケンを読む。
ただそれだけだ、何を思ったか思わなかったかそれは皆目分からない。
表参道を明治通りまで歩き交差点から還りの流れを今度は原宿駅まで歩く、次に表参道の反対側歩道でそれを繰り返し、次に竹下通りを往還しさらに枝道を一時間以上アチラコチラ歩き回った。

私のこの行為は当初の意図に反し何らかのアピールとしては全くの無意味でしかなかったことは確かだ。
しかし、見られることが少なからぬ快感をもたらすのだということには少し驚いた。
私は小さい頃から人前に出るのがいやでいやでたまらなかったのだ。

カフカの小説を思い出した。
ある日気がつくと自分は異形の者と化している。
愛する人々や親しい人々がそれに気づきこちらを見る。
かつて見る者であった自分は不可解な力を感じそれから逃れようとしてもがいていた。
不可解な力とは何かそれは支配する力である。
人をがんじがらめに縛りつけ抑圧する巨大な力だ。
だがそれがどこからやってくるのか何に由来するのかてんで分からない。
それは見えない力、言葉に出来ない力なのだ。
見えない力を見ようとして悪戦苦闘の末、気がつくと見られるものへ変身していたのだった。
戦術のコペルニクス的転回である。

ここからどう戦うかそれが問題だ。a0023254_16125990.jpg
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by nhsmt | 2013-11-24 16:12