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巨樹

土曜日、奥多摩の山を歩く。
7時間も歩いて疲れきったが倒れることも無く何とか歩きおおせた。
山行の終わり近く標高800mほどの高明山頂を過ぎたあたりから不思議な時空に遭遇した。
山頂を少し下ったところに小広い平地があり高明神社跡という小さな石碑が建っている。
このあたりから山の景色が一変する。
かつての参道とおぼしき道に沿って、さながら巨木の墓場といった情景が数キロにわたって続いているのだ。
まだ生きつづけている杉や松や名前もわからぬ巨樹たちの間には倒れて朽ち果てた巨木の残骸がごろごろと転がっている。
雷の衝撃によって激しくひき裂かれらしいまだ真新しい裂け目をかかえながら静かに佇む杉の巨木もあった。
そしてこの参道のあちこちに小さな墓標のような石碑がたっている。
その石碑には「大杉神社」だとか「鶴松神社」だとかいった木に由来するいろいろな神社名が彫りこまれており、その裏側には「明治何年、雷に撃たれて消失」だとか「大きな虚ができて倒壊した」とかいったことがそれを立てた人の名前とともにまるで墓誌のようにしるされている。
中には「明治五年、朝鮮国人金何々」なんて言うのもあるが昭和三十五年など比較的新しいのもある。
これらの石碑の立っているところにはすでに樹影はなく二本の小さな柱が立てられ細いしめ縄が懸かっている。
そこは神の領域なのだ。
これらの神々たちは国家神道などとはまるで無縁のトーテミズムやアニミズムといった古い神様や霊魂感に由来するものに違いない。

暮れかかって薄暗くなった山の中で生の時間に触れているような不思議な感覚に捉えられたのであった。
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by nhsmt | 2008-10-06 18:19