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カミはむこうからやってくる

そしてしばしば、素知らぬ顔をして過ぎ去ってしまうのだ。

4階のエレベーターを降りたすぐ左側に
地中海の東岸フェニキアからメソポタミアあたりの砂漠の中に埋もれていたかと思われる厳めしいセム族の相貌をしてカミはしずかに立っていた。
誰もそれに気づきもせずにその前を通り過ぎていた。
なぜか私は視線が合ってしまったので会釈をし敬意を表したのである。

フロアの幾つもの台の上には、あだし野念仏寺の無縁仏のような石くれがみわたたすかぎりに並んでいる。
そのそこここから座敷わらしたちがコロコロカラカラ笑いかけてくるのにいちいち相手しながらひとわたり見物して退室しようとすると、
踊り場の手前の左手に壁のように突っ立ったこちらは真新しい巨体のカミさんがはにかみながらこちらを見ているのとまた視線が合ってしまった。

私はあくる日の朝5時に起きだしてこのカミガミたちを迎えに行ったものである。
by nhsmt | 2010-05-29 11:00
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